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トップ > 【撮影特集】三脚 × セルフポートレート スマートドールと巡るアメリカ横断の旅
スマートドールと巡るアメリカ横断の旅 ~たびのこころえ~
<案内人> 田口尚哉(たぐちまさき)
神奈川県生まれ。東海大学文学部中退、東京綜合写真専門学校在学中。
大学の写真部にて活動をしていたが、「旅×ドール×セルフポートレート」の魅力に惹かれ大学を中退。現在横浜市にある「東京綜合写真専門学校」にて写真芸術を学んでいる。これまでに相棒のドールと共に厳冬期北海道・日本一周など多くの場所を訪れその累計日数は 200 日を超える。
twitter:https://twitter.com/mscr_0102
<案内人>
Smartdoll「末永みらい」
ClutureJapan 代表 Danny Choo 氏がデザイン・提案をした 1/3 サイズのファッションドール。これまでの球体関節人形に比べ現代的なデザインが施されており、同社では専用のアパレルも数多く展開している。

ドールについて

ドールには 1/1 サイズや 1/12 サイズなど様々な大きさ・造りがあり、私が主に撮影している「スマートドール」は 1/3 サイズのソフトビニール製球体関節人形です。

ドール撮影の魅力としてフィギュア等の静物的な要素を含みながら、肘や膝などに使用されている球体関節により多くのポージングを可能としていて、人間のポートレートのような要素も含んでいます。

写真は伊勢丹新宿店で行われた展示風景。
スマートドールの製造は国内で行われており、従来の球体関節人形のよさは
そのままに「スマート」に設計されている。
また、ヘッドメイク(頭部のメイク)や付け替えのできるウィッグ、自分好みの服装を着せられることから無数のカスタマイズができることも魅力の一つです。主に日本で主流となっているドール撮影は自分好みにカスタマイズしたドールを貸スタジオで撮影したり、季節ごとの風景と共に撮影するため野外に赴いたりします。

夏をイメージして撮影した写真。
球体関節により、なめらかなポージングを表現できる。
スタジオでのバストアップ撮影。
左と同じ子だが、ウィッグや服を変えるだけで、
これだけ違いが生まれる。

アメリカ大陸横断に挑戦

私は「自分とドールの関係性」を深く考え試行錯誤した結果、「旅」という日を追うごとに流れる景色の中で自身とドールを一枚の写真に納めるスタイルへと行き着きました。

厳冬期北海道の屈斜路湖にて。
ドールとのセルフポートレートを可能にするため広角レンズを使用。
これまでに?20℃にも達する北海道の地での撮影を試み、日本一周の旅では日本全国を原付バイクで巡り全ての都道府県でのセルフポートレートの撮影に挑戦しました。

今回は私とドールの旅の集大成。舞台はライダーの憧れの地、アメリカ合衆国。私は自転車に荷物とスマートドールを載せて、旅に出ました。

事前準備について

フライト当日の様子。
自転車は 18kg、荷物は機材やテントなど合わせて 50kg に及んだ。
事前の準備では、旅で使用するテントなどのギアのほか自転車のリペヤパーツや工具、それに加えて撮影機材とスマートドールと多くの準備が必要になります。数が多いため、一つひとつのギアの選定にとても気を使います。

撮影機材についてはフルサイズのミラーレス一眼、コンパクトデジタルカメラ、アクションカムを選定しシーンに応じて使い分けて使用していました。

また、三脚の選定にも気を使います。セルフポートレートを撮影するため高さの異なる三脚を複数持っていく必要があり、一つひとつの三脚に多くの可動域や機能性を必要としました。今回私が選定した三脚は UTC-53II ASULTRA 455です。

脚の反転収納とウルトラロックによる小型カーボントラベル三脚「UTC-53II AS」
UTC-53II ASはフルサイズの一眼レフからアクションカムまでを載せることができ、脚を広げることでローポジションも可能としています。

ミラーレス一眼やAPSサイズのデジタル一眼レフでの使用を想定した、軽くコンパクトなスタンダード三脚「ULTRA 455」
ULTRA 455はストロボやレフ板を載せる補助的な使用法やUTCより低いアングルから撮影するときに、と2本の三脚を使い分けて使用していました。

実際に走行したルート。
ニューヨークからロサンゼルスへと横断するルートで、ルート66をベースに作成。総走行距離は 6287km に及んだ。
事前のルート作成もとても苦労しました。自転車という移動手段のため、自動車専用道や勾配の高い急坂を避けて高低差の低い道で走ることのできるルートを選ぶ必要がありました。

また、西部の砂漠地帯では、100kmほど休憩施設が何もない場所もあり、事前にチェックポイントを作成することも重要です。

泊まる可能性のある休憩施設・宿泊施設・キャンプ場・観光地を地図へポイントしておき、現地での作業を減らす工夫をしました。

大陸横断の様子

走行中の様子。ナンバープレート風に作成した「NY → LA」のプレートですれ違う人々に一瞬で私の情報が伝わるようにと工夫をした。
自転車でアメリカ大陸横断と聞いて、皆さんはどのような旅を想像するでしょうか。

自由気ままで縛られず、優雅な旅。とても過酷で毎日が自身との体力勝負。横断を終えた私の感想として、このどちらでもありません。

「アメリカ大陸横断」と聞くととても壮大でスケールの大きい旅だと思われますが、内容としては3ヶ月間という決まった期間の中での小さな1日の連続です

オクラホマ州で自転車が故障し、走行不可になったところを助けてくださったティミーさん。
日本に帰国した後、彼女にお礼のクリスマスカードを送ったが無事届いただろうか?
自転車旅では、1日で100km移動できれば「今日はがんばったぞー!」という具合に毎日がスローペースで、平均1日あたり70~80km の移動となります。

朝日が昇ると同時にテントを撤収し、あらかじめチェックしたルートや休憩施設を目指し、カロリーを計算しながら食事を摂る。そして暗くなる前に再びテントを張り、翌日のルートを調べた後に就寝する。この日々の小さな移動と積み重ねで大きな旅が紡ぎ出されます。

この日は走行中に声を掛けられ、ご好意でご主人の自宅で泊まらせていただくことに。
ご主人に気を使い、庭でテントを張った。
ニューメキシコ州を通過中に撮影。
この日は特に気温が暑かったのをよく覚えている。
そして1日の限られた時間のなかで撮影の時間も忘れてはいけません。走行時間や休憩時間、日没を見越しての到着を目標にしていると1日で完全に自由な時間というものはほんのわずかです。

しかし眼前には初めて見る景色が溢れています。私はこの美しいアメリカの景色の中でドールと撮影するために、「撮影のスピード」というものを大切に考えていました。

アリゾナ州の山間部で撮影。
写真には飛行機や人工衛星も写っているが、実際にはいくつもの流れ星を見ることができた。
手は抜きたくない、しかし撮影の時間は限られている。そして仮に “ その場所 ” で撮影したとして、その1km先により心惹かれる景色があったらどうでしょう?

旅の中での撮影は場所の選定も含めとてもシビアなのです。私は自分ルールで「1箇所に留まる時間は 30 分まで」「その先により心惹かれる景色があったとしても、後悔がない場所でのみ撮影すること」「陽の向きや画角を考慮し、一瞬で頭にイメージが浮かぶ場所」。この3点を撮影のルールとしていました。

撮影地に到着した瞬間から撮影する写真をイメージし、30分でそのイメージを完成させるタイムテーブルを事前に考えてから私とドールのセルフポートレート撮影が始まります。撮影のスピードを上げる工夫として私はUTC-53II ASを使用しました。

カーボン製の三脚のため「軽量」「コンパクト」という点でこちらの三脚を選ばれている方が多いと思いますが、「自由雲台」「ウルトラロック機構」「180°回転する脚」によりカバンから出してからわずか 1 分ほどで三脚とカメラのセットが終わります。

私がこれまでに使用してきた三脚のイメージでは、3way 雲台をファインダーを覗きながら少しずつ動かしていき、高さが合わなければ脚のロックを解除してゆっくりと水平を見つけていく。どこか写真を撮るための儀式のように私は感じていました。

しかしUTC-53II ASでは180°回転する脚によりスムーズに展開し、ウルトラロック機構と自由雲台により直感的に画角を合わせることができるため、撮影時のストレスが一切なく、それまで儀式のように感じていた三脚のセットアップが楽しみになっていきました。

完成をイメージし、三脚もスムーズに展開したらあとは自身とドールをファインダーに納めるのみです。

最後は一番の写真で!

締めの言葉

日々の時間は限られています。日常生活においても、「旅」の世界の中でも。私はこの旅を終えて、「撮影」という行為がとても恵まれている大切な時間だと感じました。

私の場合はドールとのセルフポートレートですが、皆さんは普段なにを撮影されているでしょうか。どうか撮影する喜びを忘れずに、大切なその時間を存分に楽しんでください!私は次の休みに、時間を気にせずみらいちゃんと撮影を楽しんできたいと思います。

今回登場したベルボン製品

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